東洋医学

2017年12月27日

縁起物 北里オリジナル屠蘇散

正月の「お屠蘇(とそ)」は中国・三国時代(諸葛孔明や劉備玄徳が活躍した時代)、魏の名医華陀(かだ)が創製したものです。元来「お屠蘇」は流行病を予防するための薬酒で、日本に伝来したのは平安時代(嵯峨天皇の頃)でした。それが病気予防のまじないの意味で宮中で使われ、その後江戸時代には一般庶民に広がったと言われています。「お屠蘇」は絹の袋に入れ、除夜に井戸の中に沈め、元旦に取り出して酒の中に入れ神に捧げます。年少者から順に年長者へと飲めば、一年中病気から逃れることができるといわれ、正月には欠かせない行事となっていました。

昔の「お屠蘇」は毒性の強い薬も含まれていたといわれていますが、それを豊臣・徳川両家の主治医曲直瀬道三(まなせどうざん)が著書『衆方規矩(しゅうほうきく)』で、白朮(おけら)、桔梗(ききょう)、山椒(さんしょう)、防風(ぼうふう)、桂皮(けいひ)の五種類を細かく刻んだものにしました。

北里大学東洋医学総合研究所では、更にチンピ、サンザシ、タイソウ、チョウジを加えて北里大学東洋医学総合研究所外来などに来院された患者さまにも「北里オリジナル屠蘇散」としてお配りしています。

オケラ (健胃、発汗、利尿、下痢止めなど)
キク科のオケラの根茎を乾燥させ、外皮を除いたものである。オケラをいぶすと室内の温気を除くといわれ、雪国ではよく囲炉裏にくべていたものである。また京都八坂神社では大晦日の篝火にオケラが加えられ、そのオケラ火を縄に移して、家に持ち帰り、雑煮や大福荼の火種とすると無病息災のご利益があるといわれている。

キキョウ (去痰、、強壮
キキョウ科の多年草で、秋の七草のーつとして数えられている。生薬名である「桔梗(ききょう)」とは「根が結実して梗直している」という意味で名付けられており、古くから根の形態が人参に似ているため混乱された生薬である。秋に根を堀りとり、水洗いしたあと日干ししたものを薬用に用いる。韓国ではビビンバなどに用いる食用の山菜として「トラジ」という名で呼ばれている。

サンショウ 胃、利尿、駆虫
ミ力ン科のサンショウの成熱した果皮である。果実が黄色昧を帯びる夏の終わりに採取し、日干しにしてから果皮だけを集める。ピリリと辛い山椒は、「七味唐辛子」の原料などで使われる日本で代表的な香辛料である。山椒は古くから民間薬として胃痛や歯痛に用いたり、虫刺されには山椒の葉を塩でもんでその汁をつける。また香ばしい山椒の若葉は吸物や煮物に使用されている。

ボウフウ 発汗、解熱、鎮痛など)
セリ科のボウフウの根である。生薬名である「防風(ぼうふう)」とは「風邪を防ぐ」という意味で、漢方では感冒、頭痛、関節痛、筋肉痛、下痢などに用いる。防風の原植物の一種は江戸享保年間にわが国に渡来し、奈良県大字陀の森野藤助氏により栽培されたもので、「種防風(しゅぼうふう)」「藤助防風(とうすけぼうふう)」の名がある。

ケイヒ 、発汗、解熱、神経など)
クスノキ科のケイの樹皮を桂皮(けいひ)といい、薬料・香料として古くから世界各地で用いられていた。古代エジプトでは没薬(もつやく)などの香料とともにミイラを作るときに用いられていた。京都の「八つ橋」やニッキなどの菓子の原料や香料としていたものはクスノキ科のニッケイの根皮であり、日本の暖地に栽培されている植物で、薬用としては用いられていない。

チンピ (健胃、鎮咳、風邪など)
熟した温州ミカンの果皮を生薬「陳皮(ちんぴ)」として用いる。新しいものは刺激が強いため長期間陰干しにして刺激成分を蒸発させたものが良質な生薬であることから、古いという意昧の「陳」という文字が使われている。ミカンの仲間は果物としてのみならず薬としても重要で、様々な種類のミカンが薬用とされる。よく用いるミ力ン科の植物としてナツミ力ンの未成熟果実を「枳穀(きこく)」、幼果を「枳実(きじつ)」として用いる。その薬効もそれぞれ少し異なる。

サンザシ (胃、整腸、解毒な
バラ科のサンザシの成熟果実に含まれる核を除いて日干しにしたものである。サンザシは八代将軍備川吉宗が外国産薬草を奨励したことを受け、享保11年にサンザシの苗14本を麻布御薬園に移植したとされ、それ以前に朝鮮半島から伝わってきたといわれている。民間療法として単味でも用いられ、二日酔いや食中毒に煎じて飲むことがある。

タイソウ (鎮痛、強壮など)
紅熟したクロウメモドキ科のナツメの果実を生薬「大棗(たいそう)」として用いる。ナツメは、「夏芽」のことで、初夏に芽を出すことから名付けられたものである。夏のころ淡紫色の花を開き、秋に赤い実が熟す。雨の少ない道筋に生えていたサネブトナツメを改良したもので、筋肉の急激な緊縮によって起こる痛みや急迫症状を緩和するといわれている。

チョウジ (防腐、鎮痛口臭消しなど)
フトモモ科の木本(もくほん)植物で、そのつぼみを乾燥し生薬「丁子(ちょうじ)」として用いる。この「丁」の字はつぼみが「釘(くぎ)」に似ていることに由来する。英語では「クローブ」と呼ばれているが、その語源もフランス語の「釘(クルー) 」という意味とされる。スパイスとして肉料理、ケーキ、プリンなどにも用いられている。

北里大学東洋医学総合研究所 漢方鍼灸治療センター 薬剤部

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