よみうりランドクリニックモール――その名の通り東京と神奈川をまたぐ多摩丘陵に位置した遊園地・よみうりランドに隣接する、クリニックの複合施設である。内科、外科、消化器科、小児科、皮膚科の専門クリニックほかリラクゼーションサロンが、また、皮膚科にはメディカルエステサロンが併設されている。

thumbOtsuka1北里大学医学部を卒業後に慶應義塾大学医学部の医局で研修を積んだ大塚知子が、勤務医を経て、ここに「ともこ皮ふ科」を開院したのはクリニックモールの開設と同じ、平成18年のことだった。

「開院を決めたときには医師仲間からずいぶん心配されました。なにしろ場所が場所ですから」

住宅地の一画であったり駅近であったりするのが一般的なクリニックにあって、遊園地の一画、駅からはバスに乗るか、遊園地が運行するゴンドラに乗ってこなければならないここは、医師仲間にはおよそ開院には不向きな場所に映ったのだろう。大塚自身も「うまくいかなかったら勤務医に戻ればいいから……」と、自分に言い訳しながらの開院だった。事実、当初は患者よりもスタッフの方が多い日も少なくなかったという。

そんなともこ皮ふ科に、いまでは年間延べ約2万人の患者が訪ねてくる。ホームページ以外、特に広告してきたわけではない。口コミで広まった2万人である。大塚の実体験にもとづく診療が、評判を呼んだのだろう。

thumbOtsuka2「私自身、子どものころからアトピー性皮膚炎に苦しんできました。特に高校生のころから症状が悪化して、通院して、根気よく治療に努めたけれどちっとも良くならなくて……私が医師を目指したのは、もう、自分で治すしかないと考えたからなんです」

赤くなった顔を見られるのが怖くて、人前で顔を上げることができなかった。好きな人に告白もできなかった。研修医時代には患者よりも重症化して入院も経験した。そんな苦しみから解放されたい一心で医療の勉強に励み、アトピーとのつき合い方がわかった自分が、今ここにいる。

ともこ皮ふ科の医師は大塚ただ一人である。だのに診療ベッドは5台もある。

服の脱ぎ着は急かさないがモットーなんです。1台や2台のベッドでは、患者さんに急いでもらわなければいけないでしょ。でも5台あればそれぞれのペースで脱いだり着たりしてもらえる。患者さんを忙しく動かすのではなく、私が動けばいい」

スタッフも15人。診療科目ひとつだけのクリニックとしては異例だ。

thumbOtsuka4「スタッフの数には併設のエステサロンのスタッフも含みますが、ここで働くエステティシャンはクリニックのスタッフとして採用し、エステティシャンに育てた人たちです。またクリニックの診療受付と会計の窓口は分かれているので、その分、スタッフも必要です。病院に来るということはお医者さんに診てもらいたいからですよね。だから診てもらえるまでは待てるんです。でも、診療が終わったら早く帰りたい。会計で待たされるのって嫌なものですよね」

もちろん、スタッフはすべて大塚が面接して採用する。選考基準は「笑顔がすてき」であること。

「笑顔でお大事にって言われれば、よし治そうとする気持ちが強くなると思うんです。」

開院当初は大人のアトピーを専門的に治療するクリニックにしたいと考えていたというが、年間延べ2万人の現実は、百歳を超えた高齢者からゼロ歳の赤ん坊までと幅広い。その一人ひとりに、時に母親のように、娘のように、姉のように、患者の世代に合わせて親身に接する大塚の診療スタイルは、診察というよりもカウンセリングに近い。

thumbOtsuka5「病は気からというけれど、医者としてたくさんの患者さんと接しているうちにその言葉の意味がわかりました。大切なのは患者さんと医者の信頼関係です。それがないと患者さんは言わなければいけないことを言わなかったりして、医者も適切な治療やアドバイスができないし、改善もしない。そうなると患者さんも投げやりになって治療に前向きになれない。患者さんには思っていることを全部話してもらいたい。だからとことん話すんです。時には1時間でも、2時間でも」

かつて自分のアトピーを治すために、いわば自分のために医師を目指した大塚だったが、その大塚が医師となって開院したともこ皮ふ科は、患者本位のクリニックだった。

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