人工呼吸thumbKoike4器は機械である以上、常に故障や操作ミスなどのトラブルと背中合わせだ。気管挿管やそれに伴う誤嚥などをきっかけとする感染症を引き起こす可能性もある。とくに継続的に装着する場合は、常に患者の状態の把握に努め、変化に応じた治療や設定調整、あるいは離脱といった、高度で専門的な判断をともなう対処が必要になる。

ICUなど、24時間監視できる態勢下におくことが理想ですが、ICUの病床数は限られています。それに、人工呼吸器は常に改良されているため、旧型と新型で、あるいは製造メーカーによって操作方法が異なるなど、監視を行き届かせればいいというものでもないんですよ。

また、人工呼吸器の装着如何に関わらず、一般病棟に入院中の患者さんの容体が急変することがあり、その原因が合併症だったりすると、診療科目を越えた対応が必要になる場合もあります。こういったどの病院も頭を抱える問題に対処するために、北里大学病院にいち早く設置されたのがRSTRRT室なんです」

thumbKoike1RSTRespiratory Support TeamRRTRapid Response Team。前者は呼吸療法サポートを使命とする、後者は患者の急変によるあらゆる緊急事態に対応する、診療科目を越えた、いわば院内救急班だ。当初は人工呼吸器の問題に気づいた医療スタッフによる自主的な取り組みを、その重要性に気づいた病院側が後押しして、2011年、RSTRRT室が設置された。専属メンバーは室長である医師と2人の看護師、および事務スタッフに小池を加えた5人。小池は、その活動が認知される前の、自主的な取り組みであったころからのメンバーである。

「はじめは呼吸療法の問題点を洗い出してその解決法を導き出す、いわば有志によるワークキングループでしたから、それぞれの任務をこなしながらの活動でした」

高校時代のバレーボール部で膝を壊した経験からスポーツ医学に関心を抱き、北里大学のリハビリテーション学科に進んだ小池は理学療法士である。当時はリハビリテーションセンターに所属して、その任にあたっていた。

thumbKoike2「理学療法士は診療科目を越えた存在です。その意味で、やはり診療科目を越えた人工呼吸器の問題に気づきやすい立場にいたと言えるかもしれません。

問題意識を共有するスタッフが集まった勉強会のような存在に、正式なチームとしてのお墨付きが与えられ、週1回の病棟ラウンドが許されたのが2006年のこと。といっても、それぞれの所属部署との兼務であることに変わりはないので、病棟をラウンドして診察するというよりも、各病棟と話し合う機会をもらって、人工呼吸器にまつわる問題が生じたら、どんなことでもいいから私たちを呼んでくださいとお願してまわっていたというのが実情です」

チーム発足当初は部外者と見なされ、煙たがられることも少なくなかった。

それでも地道に、でも熱心に、そんな活動を数年続け、ようやく理解が広がってきたと思えるようになったころ、小池は、RSTに似た取り組みが進んだ海外の事例を知ることになる。

「それがあらゆる緊急事態に対応するRRTだったんです。オーストラリアの事例でした。患者さんの安全を守るために組織されたチームという意味では私たちが取り組んでいるRSTも同様です。オーストラリアではどのような活動がなされているのか、この目で確かめたいと思いました」

thumbKoike5そう思ってからの小池の行動は早かった。さっそく病院に事例を報告し、渡航による1か月間の研修を申請して認めさせる。

2011年のことです。それは人工呼吸器に端を発して組織されたRSTよりも守備範囲の広い組織でした。

帰国してからはとんとん拍子です。RST/RRT室ができて、スタッフも兼務ではなく専属になった。RSTとして積み重ねてきた実績が認められたわけです」

今日のRSTRRT室は24時間体制。とても5人の専属スタッフだけでまかなえる職務ではないが、その必要性に共感する医師は協力を惜しまない。「理解が進み、発足当初は想像もできなかったほどやりやすくなった」環境の中、麻酔科医や救急科医の協力を仰ぎながら、診療科を越えたチーム医療を展開している。

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