「祖母が入院してお見舞いに行ったときのことです。その病院には小児がんや白血病で入院している子どもがいたのですが、なかには免疫力が低下して、家族と面会もできない子がいることを知りました。当時のわたしよりもずっと小さな子どもなのに……それを聞いたら何もできない自分が歯がゆくて……」

聖路加国際病院で臨床検査技師を務める福寿彬子に医療職を目指したきかっけをたずねると、中学時代の思い出を語り出した。

thumbFukuju1「看護師という選択肢もありましたが、検査を通じて患者さんに寄り添える“縁の下の力持ち”である臨床検査技師を考えるようになりました」

検査から明らかになる病態と、一方で、未知なる部分が多い病態の解明に貢献したいという思いから臨床検査技師の道を選んだのだという。

大学では悪性腫瘍の治療の臨床応用に向けた研究にも取り組む北里英郎教授の研究室に所属。当時から小児がんをテーマとする勉強会等に出席するなど、自主的な研究活動を欠かさなかったのは、心を痛めたあの思いが忘れられなかったからに違いない。

「その勉強会のほとんどが聖路加国際病院の主催でした」

聖路加国際病院の副院長は小児がんの専門医として著名な細谷亮太氏であり、同院はかねてから小児がんを患った子どもの治療やその家族のケアに力を入れてきた病院だ。2013年2月には全国15の小児がん拠点病院のひとつにも選ばれている。

「縁があったんですね。大学在籍当時から、第一志望の勤務先でしたから」

2006年に卒業。念願だった病院に勤められたことで、白血病をはじめとした血液のがんについて勉強しようという思いがさらに強くなったという。

thumbFukuju2「がんを発症すると、染色体や遺伝子は一定の共通した変化を見せるものですが、なかには教科書通りの変化をたどらないケースがあります。それはなぜなのか。ルーチン業務のなかで携わるさまざまな病態について、しっかり考え、勉強していきたいんです」

聖路加国際病院の臨床検査部門には、福寿の勉強・研究意欲を満たす十分な環境がそろっている。そして院内で発表の機会を設けるなど、職員の自主的な勉強や研究を奨励している。

一般検査、血液学、生化学、免疫学、血清学、臨床生理、輸血の各部門に分かれて検査が行われる聖路加国際病院の臨床検査で、入職から2年間、福寿は血液検査を担当していたが、3年目からの3年間は生化学検査の担当となる。その間も、心不全の病態把握の指標となるバイオマーカーの共同研究に携わり、学会発表も行ったという。

「病態によって行なわれる検査は実に多種多様です」。

そして6年目から、血液のがんの症例に間近で携わることのできる血液検査へ異動になった。

「検体の分析に長けた臨床検査技師の技能を業務に役立てることで、病気と闘う患者さんにもっと寄り添うことができるのではないか。顕微鏡で見ているのは、細胞や血液などの検体にすぎないかもしれないけれど、わたしたち臨床検査技師が見つめているのは、患者さんなんです」

thumbFukuju3子どもの病気に心を痛める自分に気づいて選んだ生涯の仕事。臨床検査科に入職して2013年で8年目を迎え、「後輩の方が多くなった」という。そのため、ルーチンな検査業務に加えて、後輩の指導にも力を注いでいるという。しかし、入職当時の気持ちを忘れず、勉強と研究意欲は衰えるどころか、ますます高まっているようだ。

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